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Maskerade-04


 
ふっと、室内に月光が射し込む。
 …ジェイド…!!?どうして…。

「体調が、御悪いんでしょう?どうして私を御呼びにならないんですか?」

 そう言ってゆっくりと近付いて来る。

「どうして…わかった…?」

「甘く見ないで欲しいですね。貴方に変調があれば、離れていたってすぐ気付きますよ。仮にも参謀なんですから。」

 黙ったまま相手を見つめる。

「プラチナ様、雰囲気が変わりましたね。何て目をするんですか。…まるで、誘ってるみたいですよ。」

「何の事だか知らないが…今日は疲れた。…一人にしろ。」

 あんな事があった後で、側にいて欲しい気持ちも確かにあったが、俺が今日サフィルスに聞きに行ったことをこの男に悟らせてはいけない。それはきっと、彼を傷つけてしまう。そっと寝返りを打って目を背けようとして出来なかった。

「逃がしませんよ。…話して下さらないのなら、貴方の身体にお聞きしますが?」

 腕を掴まれ、一つにまとめられる。と、ジェイドの動きが一瞬止まった。

「何です、この痕は。」

 強い力で手首を掴まれ、ジェイドがひどく怒っているのを知った。

「何でも無い。大丈夫だから、離せっ。」

 言っても無駄な事だと知っていて言い訳をする。

「大丈夫な訳無いでしょう。何処で、誰にやられたんです?」

 何も言えずに、目を伏せる。ジェイドは暫く黙っていたが、不意に俺の体から手を離した。

「…いいですよ、別に。貴方が主だ。私に言わなければいけない事なんて何一つ無い。…お休みなさい、プラチナ様。明日はまともに仕事をこなして下さいよ。」

 冷たい、声だった。ここ数日の夜に感じていた温もりなど露ほども感じさせないほどの。遠ざかる足音。我知らず涙が溢れる。…夢のことなど、気にしなければ良かっただろうか。
 ああ、でも悲しんでいる場合ではないのだ。サフィルスに入れられた機械を一刻も早くこの身から出さなければ。いつの間にか振動は止まっていたが、またいつ始まるか分からない。もし又あれが始まったら、とても戦いなど出来ないだろう。


 埋め込まれた場所が場所だけに、自分の手で触れるのには抵抗が有った。
 湯で洗い流せないだろうかと思い、温泉へと向かう。前にジェイドが誰も来ないからと教えてくれた場所…。今夜も月が照らしているだけで、俺の他に誰もいない。服を脱ぎ落とし、湯の中に身を浸す。
 その瞬間、今まで沈黙を守っていた体の中に埋め込まれたものが再び振動を伝えて来た。たまらず膝を折り、岸壁に取り縋る。けれど、体内のものは出てくる気配も、動きを止める気配も無い。それどころか、先ほどより振動が強くなった様な気さえする。耐えられなくなった唇から声が漏れ、背中が弓なりに反り返る。

「…あ…ああ…止せ、サ…フィ…」

 この様な物を埋め込んだ相手は此処にはいないのに、思わず懇願の言葉が口をついた。何とかしなければと、自ら手を後ろに伸ばす。差し込む瞬間痛みが走ったが、無我夢中で震えているものを探った。その自分の指にさえ感じてしまう自分が厭わしい。自分の手に触れたとき、ソレは一際震えが大きくなり、そして更に奥へと入り込んでしまった。絶望的な気分に陥りながら、荒い息を吐く。

「…プラチナ様。何を、しておられるのです?こんな所で…。」

 振り向くと、月の光を背にしたジェイドの姿。逆光で表情はよく分からない。何も答えられないくせに、あがる吐息だけは止めることが出来ず、無言で近くの岩にしがみついて声を殺した。後ろで幽かに衣を脱ぎ落とす音がし、思いがけず間近で声が聞こえる。

「…プラチナ様。こちらをお向きなさい。御自分で慰めるよりは満足させて差し上げられると思いますよ。」

 優しい口調だったが、奥に棘があった。怒っているのだ、俺がジェイドに秘密で行動を起こし、こんな不始末をしでかした事に。それにしても自分で慰めるとは何の事だ…?
 黙ったままの俺にじれたのか、ジェイドの手が俺の肩を掴み、体の向きを変えさせる。無言で抱き寄せられ、先ほどまで自分で触れていた場所に指を差し込まれた。乱暴に中を掻き回され、悲鳴を上げかけたのを抑えてジェイドの首にしがみついた。

「本当にこんな事、何処で覚えたんです?…私にも抱きついて下さるんですね。誰でもいいんですか?」

 ジェイドの口調に揶揄が混じる。…違う。そんなつもりではなかったのに。体内のモノが相変わらず大きく震えていた。きっとジェイドには気付かれてしまうだろう。

「…っっ」

 ジェイドの指がそれに触れ、振動は更に大きくなった。

「こんな機械、御自分でお入れになったんですか?」

 容赦無くぐいぐいと押し込まれて。

「…ちっ…違う…俺じゃな…い…」

 否定するのが精一杯だった。そうしている間も俺の肉壁に機械を擦り付け続けるジェイド。

「や…めろ…それを、出…して…」

 嘆願してもやめてはくれない。

「サフィーと呼んでましたね。 あいつは、良かったですか?」

「な…んの…事だ…」

「この期に及んで惚けるなんて許しませんよ。答えて下さるまで離さない。貴方とあいつの接点など、無きに等しかった筈です。それなのにいつの間にあいつに、恋心など覚えたんですか?」

「…違うっ…」

 絶妙な強さで突き込んで来るジェイドの指に翻弄される。

「好きでもないのに身体を任せたんですか?…こんな物まで入れられて。誰のことでも受け入れるのなら、俺の事も受け入れて下さるでしょう?」

 ふっとジェイドの声の調子が変わったと思った途端、身体を抱き上げられたかと思うと後ろに強烈な圧迫感を感じた。

「あ…ああっっっ…」

 思わず絶叫が喉をつく。震えている機械がどんどん中へ押し込まれていき、その振動が俺とジェイドを刺激した。ジェイドが大きく質量のあるものを何度も突き入れてくる。ひっきり無しに嬌声を上げ続けて。痛みや不快感など微塵も感じない。ただ、目くるめくような快感があるだけ。意識が徐々に白くなって行き、その中で体の奥深くに何かが流れ込んで来るのを感じた。

「俺じゃなきゃ満足出来ない身体にして差し上げますよ…。」

 解放の瞬間、そう耳元に囁かれたのが苦かった。




 次に意識がはっきりとした時、俺はまだ湯の中にいて、ジェイドの腕に支えられていた。体内の器具はまだ淫らに蠢いており、後ろの異物感はそのままで。

「プラチナ様。それ、出したいですか?」

 掛けられた声に力無く頷く。

「出したいなら、方法くらいは教えて差し上げましょう。あとは御自分で頑張って戴くしかありませんけど。」

 そう言ってジェイドは惜しげもなく繋がった部分から自身を引き抜いた。

「あ…」

 思いがけず、俺の喉から抗議するような幽かな声が洩れる。足りなかったですか、と耳元で嘲笑われて、顔を背けて俯くしか出来ない。と、前を柔らかく包み込まれた。

「こうすれば、感じるでしょう?何でもいい、貴方が快感を感じることをして、少しでも快楽を追い求めて腰を振るんですよ。そうすれば自然に少しずつ下へ下りて来ますから。ほら、こうして手で追い上げるんです。」

 俺の手を取り下半身へ導くジェイド。強いるように俺の手を動かす。羞恥で指が強張っていたのも初めのうちだけで、徐々に自分から快楽を追いかけ始めた。恥ずかしい事だと分かっていて、どうして止められないのか…俺のその姿をまじまじと見つめながらジェイドが嘲笑う。

「貴方がこんなにいやらしい事をなさるとは思いませんでしたよ。でも、いい景色だ。サフィルスに感謝しないといけませんかね。」

「…見るなっ…好きでやってる…訳じゃ…ない…」

 必死で言い訳をしても一笑に付されてしまう。

「でも、もう止められないでしょう?気持ちが良くて。やっぱり、いやらしい体じゃないですか。」

 ジェイドに揶揄されながら、何度自分の手で達したことだろう。疲れきってもう倒れるかと思った瞬間、湯の中に何かがポトリと落ちた。ほっとして倒れそうになりながら、岸へ向かおうとすると、後ろから湯の中へ引き摺り込まれる。

「このまま帰るおつもりですか?そんな綺麗で艶っぽい姿態を俺に曝したら、このままでは済まないと知っておかれた方がいい。」

「もう、放せ…これ以上はもう…。」

 懇願する俺の声は最後まで発することを許されずにジェイドの声に打ち消される。

「拒むなんて、許しませんよ。その機械を出すのを手伝ったのだから、御褒美下さったっていいでしょう?」

「鳩の餌なら、今度買ってやるから…」

「すっぽかさないで下さい。貴方が、俺の餌になるんですよ。…分かっているでしょう、俺の気持ちも、俺が云わんとしている事も。」

「…?」

「いいですよ、拒むのなら、もう一度機械を入れますよ。」

 脅されて、慌てて首を振った。

「嫌だ、止せ…わかったから…でも…ここでは嫌だ…。」

「…仕方ないですね、テントにお連れしましょう。でも、約束ですよ。逃げたらどうなるか、分かっていらっしゃいますね。」

「…分かっている。」

 そう答えると同時に無言で抱き上げられ、ジェイドのマントに包まれて馬の背に上げられた。そのままジェイドの腕に抱かれてテントへ帰る。俺の服や馬はあいつが適当にまとめて持ち帰って来たようだった。あの妙な機械をも持って帰って来たのかどうかは良く判らないけれど…。




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