| 節分 -SPECIAL THANKS FOR TSUYUKI SAMA- |
ぱらぱらぱら・・・・・・。 細く開けられた襖の間から数粒の豆がぱらぱらと室に飛び込んで来て。 半妖の弟が随分と前から其処で此方の気配を窺っていた事に気付いてはいたけれど、その突飛な行動に殺生丸は思わず微かに眉を寄せて立ち上がった。 人の室に豆なぞまいて・・・・・・どうしようというのだろうか・・・・・・? 兄の不機嫌な様子を感じ取ったのだろう、犬夜叉はさっと踵を返してぱたぱたと回廊を走って行く。 走る事はせぬまでも、殺生丸も急ぎ足でそれを追った。 元々、目的の相手を追う事などたやすい。 姿が見えぬとて、匂いが居場所を教えてくれる。 ・・・・・・果たして、異母弟は。 中庭の木の陰で、一人の妖怪の背に隠れていた。 「父上・・・・・・?」 その背格好や気配は紛れも無い己の父のもの、けれど今宵はその顔が何とも面妖な仮面に隠されていて。 意表をつかれて思わずそんな声が出る。 「はは、驚いたか? 今宵は人の世では祭りの日でな、私もそれに習おうかと思ったのだが。」 面を外す事無く笑う父に、殺生丸は黙って膝を折る。 「左様でございましたか。・・・・・・お邪魔を致しました。」 きっと半分人間の血が流れる弟に人の楽しみも味わわせてやろう、という父なリの気遣いなのだろう。ならばその邪魔をしたくはない・・・・・・。 そう思ってその場を立ち去りかけた殺生丸に、間髪を入れず父親の磊落な声が掛かった。 「まあ待て、待て。お前も一掴み豆を投げて行け。 迷信ではあるが縁起ものだからな、やっておくに越した事はない。」 そう言いながら闘牙王は背後の犬夜叉から豆の入った枡を受け取り、殺生丸の方向へと差し出して。 勢いに押されて思わずそれを受け取ってしまってから、殺生丸は僅かな困惑を表情ににじませた。 「あの・・・・・・父上。これを、一体どうせよと・・・・・・?」 目の部分のみが空いて中から外が覗ける様に作られている鬼の面の奥で、父の瞳が悪戯な光を湛えて見つめているのを感じて、殺生丸は僅かに顔を俯ける。 「投げるのだ、鬼は外、と。 ・・・ふ、念の為言っておくが、勿論今宵の鬼役はこの面を被っている私だぞ。」 殺生丸の顔に当惑が色濃く浮かぶ。 「父上に・・・・・・?」 と、それまで父親の背に隠れていた犬夜叉がひょっこりと頭を覗かせた。 「あの・・・・・・父上、豆投げても怒らなかったよ、兄上? お面に当たるから痛くなんかない、って笑ってた…」 半妖の弟にそんな風に諭されて、殺生丸の眉が微かに寄る。 「お怒りになられずとも、父上に向かって物を投げ付けるなど、私には・・・・・・」 どうやら本気で悩み始めてしまったらしい己の長子を見て、闘牙王は『良い』と手を振ってそれを制した。 「犬夜叉、もうすぐ暗くなってしまう。 もう屋敷内の全ての部屋に撒き終えたろう、そろそろ母上の所にお戻り。」 己の父親と、そして兄とを交互に眺めて『じゃあ、お休みなさい!!』とぱたぱた駆け出していく犬夜叉を、何とはなしに二人で見送って。 「さて、殺・・・・・・?」 どうあっても父に豆を投げぬと許して貰えぬのだろうか、と一瞬びくりと肩を震わせて振り返る殺生丸に、闘牙王は目を細めてそっと手招く。 「ふふ、そうではない。・・・・・・こちらへおいで、私の傍へ。」 従えぬ理由も無く、父の言葉通りにゆっくりと歩を進める殺生丸の手が不意に強く引き寄せられた。 「・・・・・・っ!?」 一瞬の後には外気で冷たく冷えていた筈の唇に、熱い感触。 微かに開いていたそこから、歯列を割って父の舌が入り込んで来る。 ようやっと開放された時には二人ともすっかり息が上がっていた。 「父上、この様な屋外でいきなり何を・・・・・・」 生理的な涙をかすかに瞳に浮べて父を見上げる殺生丸に、闘牙王は又もや悪戯な笑み。 「そなたが私に豆など投げられぬ等と言うから・・・・・・まるで誘われているような気がしたぞ。犬夜叉の前でこうせぬよう己を抑えるのは大変だった。」 平然とそんな事を言い放つ父親に、殺生丸の頬が瞬時に染まる。 「その様なことっ・・・・・・それより鬼の面はどうなされたのです、いつの間にお外しになられたのですか!?」 明らかに慌てふためいているのだろうその言葉に、闘牙王はやはり余裕を見せて笑った。 「つい先程。そなたとて、鬼の面と接吻したくはなかろう、殺?」 『知りませぬ』、と踵を返そうとする殺生丸を、『まあ待て』、と引き止めて。 元の通り腕の中へと閉じ込める。 「豆撒きは出来ぬというのなら・・・・・・せめて恵方の儀には付き合って貰わねばな。」 何かを企んでいそうなその声音を耳元に注ぎ込まれて、思わず身体が撥ねるのを止められない。 「今年は申の方角だそうだ・・・・・・」 何の話をされているのか見当が付かず、ぼんやりと父の顔を見上げると、不意に身体を抱き上げられて、近くの大樹の微北東を向く側へと下ろされた。 そのまま再び深い口付けを受けて。 「ああ、今宵はな、口をきいてはならぬぞ? 普段ならお前の艶めいた喘ぎ声をいくらでも聞いていたい所だが、今宵はそういう行事ゆえ。」 そのまま唇を首筋に移動させながらそんな事を囁かれて、殺生丸は思わず息を呑む。 こんな行為をし始める父の意図に気付かずにいるには、あまりにも殺生丸は既にそれに慣れすぎていて。 「父上、おやめ下さい、この様な場所で…!!」 視線を上げた父がじっと殺生丸の瞳を捕らえる。 「声を上げてはならぬと申したであろう・・・? 本当は無言のまま食べ物を食す行事の様だがな、下手な食べ物より、私はそなたが欲しいゆえ。」 戸外である事に耐え切れぬ羞恥を覚えながらも父を跳ね除ける事は出来ず、かつどんどん深みへとその手を伸ばしてくる彼に翻弄されて、それでも言われた通りに必死で声を抑えて。 苦しげに眉を寄せるその表情が何とも色めかしく映った。 長い前戯の後に闘牙王をその身深くに受け入れて、そのまま殺生丸はぐったりと父親に身を預け、意識を失う。 「・・・・・・そなたの優しさに甘えて無理をさせてしまったか・・・・・・? だが、この様な艶めかしい姿を見れるとは、私は幸せ者である事よな。」 預けられた華奢な重みにそう声を掛けて、揺らさぬ様注意しながらゆっくりとその居室へと運んだ。 殺生丸がその黄金色の瞳をぼんやりと開けたのは数刻後の事。 覗き込む父の姿に初めは不思議そうな顔をしたものの、意識がはっきりとした途端に寝返りを打って背を向ける。 さらりとした白銀の髪が近くに置かれた燭台の光を美しく反射してその背を彩っていた。 「機嫌を直してくれ、殺・・・・・・。人払いはしてあったのだぞ? そなたの一番綺麗な姿を私以外の男に見せたいとは思わぬ故な。」 穏やかに語り掛ける大妖怪の熱情が、答えを返さぬまま微かに身じろぎして頬を染める殺生丸の心を融かすのにさして時間は掛からなかったという。 正に頂き物です、露木様の素敵イラスト(スクロールして存分にお楽しみ下さいませvv)を拝見していたら自然と浮かんだネタ。露木様に心より感謝をば。節分当日にUPなので此方の方がより節分らしい、かも知れません。 此方はお約束かも知れませんが父が鬼Ver.です、我が家は子供の頃から父の帰宅が真夜中だったので父が鬼役を演じた事はありませんが、普通の家なら一回位はお父さんが鬼の役をやられるのかなあ、と思いましてね;; 最後の方の丸齧りネタは明らかに寿司屋の陰謀だと思うんですが…(笑)脚色して食わせて…(以下自粛)この同盟自体、裏でないコンテンツ等一つも無いですもの、一々表記しなくてもまあ良し、という甘えの元で通常掲載(え?) 一作目よりも二作目がパワーアップするのは当然の事ですからなあvvでも出来れば一作目を御覧頂いた後で此方を御覧頂きたいものよ…(滝汗) 2004/02/03 牙月紫翠@管理者 拝 |