| ※このサイトではかなり珍しげな白背景、そして小文字の注意書き。(←見えないよっ;;) 此方の創作は2003年度の冬に取ったアンケートで露木様に頂きましたリクエストに基づき、牙月が勝手に怪しげな脚色を加えた結果出来上がった何ともお馬鹿な拙サイト初のギャグ小説です。(←こらっ、ギャグを書くなら書くでもっとこう洗練されたギャグを書けよ、牙月。仮にもこう贈り物なんだからっ;;(滝汗)) ええ〜…兎に角…これまで当サイトの売りだった筈の(←本当かよ)しっとりとしたシリアス小説、もしくはふんわりした甘甘小説を期待して下さっている御方にはお勧め出来かねます。(←何ですとっ;;) まあ語り口は牙月の普段のものから抜けきってはおりませんけれども…。 『…あ〜…そうなんだ、…ぐぐぐ…やっぱ、帰るっ!!回れ右上等やもんっ』というナイスなお客様には此処に非常口をご用意させて頂きました故っ。 う〜ん、まあ人生何事も経験、さらりと目を通してやるかと思し召された方はこのまま下へスクロール(笑) ああ、ちなみに…これは『弥殺』だった筈なのですが…何だか色々混じっている気がしてなりませんよ、私は…いや気どころじゃない、混じってます。(土下座) 色々混じらせるのが好きらしいです、いっぺん爆流派をくらった方がいいかも知れない…。 いや、むしろ最大の問題点は此処でしょうか…。主人公の筈の弥勒様は兎に角へたれで格好良い弥勒様をお求めの方は間違いなく非常口へ直行なさった方が良いかという出来です。(くぉら〜!!) ついでに題名もまさにそのままです。『家庭訪問』…家庭訪問がテーマです。 最後になりましたが露木様、素敵リクを有難うですvv執筆が遅くなった上に妙な仕上がりで済みません; でも書いていて何とも楽しかったであります(笑) 2004/08/02-03 牙月 拝 |
家庭訪問 >>>CHARACTER設定 殺生丸 : りんの保護者。 保護者になった経緯は本編で語られる…かも知れない。 りん : 小学生。 元々孤児だったという以外はまあ特に大いなる問題は無い子供。 邪見 : 殺生丸専属の家政婦さん。 色々な苦労話をその身に抱えているらしい。 闘牙王 : 殺生丸の父君。 勿論愛息子と共に暮らしている。 犬夜叉 : 殺生丸の異母弟。 兄君がりんの世話をしているのが微妙に気に入らない。 冥加 : 闘牙王のお側付きのノミ妖怪。 化け犬一家の血を吸おうとして良くぺったんこにされる(潰される)。 弥勒 : りんの学校のクラスの担任。 殺生丸とは今回が初対面だが勿論一目惚れする予定。 珊瑚 : 弥勒の同僚。 弥勒のことが好きだが、いつもその女癖の悪さに手を焼いている。 ↓ それでは本編へどうぞ(笑) ↓ [CHAPTER 1 昼下がりの ピンポーン…―――――。 始まりは何処の家にでも有りそうなインターホンの機械音。 館の全容が大き過ぎて、その音さえも高級感溢れて聞こえる事を除けば。 インターホンを押した男は黒いスーツに身を包み、玄関の扉が開かれるのを今か今かと待っていた。 何しろ季節は既に夏にさしかかろうかという時分…いくらゴージャスな館の前で、見事な大樹が近くに植わっていたとしても、暑くてたまらないのである。 早くこのご立派な建物の中に入って冷たい飲み物と美味しいお菓子の一つでも食べたい…。 それを運んで来てくれる館の女主人…あるいは裕福な家ならば使用人がという事も有り得るだろうが…が美人ならば尚更良い。 この弥勒という男はこの家に住んでいるりんという名の子供の学校のクラス担任であり、家庭訪問の為にこの場所を訪れているのであるが、うだる様な暑さの為か、はたまた生来の性癖の為か、そんな取りとめも無い内容が頭の中を占めていた。 ―――――それにしても遅い。 私が美人な奥さんとランデブー(違)を想像して暑さをやりすごしている間に本物が現れても良さそうなものなのに、屋敷の中からは足音一つ、ことりとも音がしないではないか。 ま、まさか、留守…!? いやいや、そんな筈は無いでしょうな、数日前にきちんと書類を生徒達に配ったのだから。 少しいらいらして、もしやインターフォンの音が聞こえていないのではないかと数回繰り返してそれを押した。 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン… はっきり言って子供じみている。うざいと思うほどに何度もそれを押した時、漸く大きな扉が小さく開かれて中から小さな影が顔を出した。 「うるさいわい、この馬鹿もんがっ! わしは忙しいんじゃ、少しぐらい門の前で静かに待っとれんのか。」 お客を迎えるには何とも無礼極まりない台詞はともかく、弥勒はその影の外見に思わず言葉を失った。 「うっ…は、爬虫類…!?」 口からぽろりと漏れた言葉に、小さな生き物は大きな目をぎょろりとさせて弥勒をじろりと見た。そう、頭の天辺からつま先まで。 「…無礼な人間じゃ、こんなのを殺生丸様に会わせるわけには行かんわい。 ご機嫌が悪くなってわしにまでとばっちりが来るに違いない。」 ぶつぶつ呟きながらたった今開けたドアを閉めようとする彼を、一瞬の差で弥勒が止めた。 「…てめえふざけんなよ、こっちは待たされて暑いんだよ。 さっさと中へ案内しやがれ。」 ―――――どうやらこの教師、完全にキレかけているらしい。 若気の至りでかつて不良をやっていたという噂は本当に違いない…。 ともあれ、玄関に出て来た小さな影―――――名を邪見という―――――はその剣幕に怯えたらしく、くわばらくわばらと言いながら扉を開けたのだった。 [CHAPTER 2 何とか応接室らしき部屋に通されたものの、待てど暮らせどお茶が出て来る気配は無い。 どうなっているんだとぼやきながらわざとらしく咳払いをしてみるも、この広い建物の中ではその様な音など聞こえはしないだろう。 …思いっきり放っておかれていませんか…? というか、今日の家庭訪問は決してこの家が最後という訳ではなく、未だここは最初の一軒なんですけど。 この何とも言えない無礼な応対しかされない家で時間を潰して次の家に遅れ、今度こそ美人な奥さんにぎろりと睨まれでもしたらどうしてくれるんですか、いや、美人は怒っても美しいとか言いますけどね、やっぱり優しく迎えて貰いたいじゃないですか。 いい加減痺れを切らせて弥勒は高級そうなソファーから立ち上がり、その部屋にあるいくつかの扉から一つを選んで足を進めた。 もしかしたら…本当にもしかしたら、だが。 あの爬虫類の家政婦が私に嫌がらせをして美人の奥さんを中に隠しているかもしれないじゃないですか。 そう、”殺生丸様”と様付けで呼んでいたから敬っていることは間違いないでしょうし…待てよ、随分変わった名前だが…まさか奥さんじゃなくてご主人…? ―――――それだったら御免被りますよ、何が悲しくてこの私が…。 心の中で考えている事がいつの間にかぶつぶつとした呟きに変わっている事に本人は全く気付いていない。 と、無防備だった所に突然強い力で胸倉を掴み上げられた。 「なっ…」 思わず驚きの声を上げた弥勒に向けられたのは、未だ幼さの残る顔立ちの黄金色の瞳。 「何でえ、てめえ。何で俺達の家の中をふらふらふらついて居やがる。」 …此処は妖怪屋敷ですか…? 良く良く見れば、いや良く良く見なくてもこの目の前の少年の耳は犬耳で、髪のキューティクルは兎も角としてその髪色は真っ白に近い銀である。 「この先は殺生丸の私室だろうが…確か今は風呂に入ってたよな…まさかあいつの入浴シーンを覗き見ようなんて魂胆か!?」 入浴シーン!?そ、それはもう、拝見出来るならば是非とも拝見したいですが…と妄想している間に、胸倉を掴んでいる相手の手の力はどんどん強くなってきて、弥勒は取り敢えず友好的に話を進めようと自らの両手を軽く上げた。 「御待ちなさい、私は怪しい者じゃありませんって。 こちらにりんという名の子供がいるでしょう、彼女の学校の教師です。 家庭訪問に伺うって…ちゃんとお知らせしてあった筈なんですけどねえ…。」 取り敢えずいくら妖怪とは言ってもこの少年は爬虫類では無いし、自分の言わんとしている事をきちんと理解してくれるかと思っていたら、『りん』という名前を聞いた途端に犬夜叉の眉がきりりと寄せられた。 「…殺生丸が拾ってきたあいつかよ。 っとにいつもいつも殺生丸にべたべたしやがって…。」 半ば独り言の様に呟く犬夜叉の表情は随分と不機嫌である。 ああ、更に不機嫌にさせてしまった、どうしたものかと弥勒が途方にくれていると、まるで天の助けの様に廊下の向こうからすらりとした人影が現れた。 心なしか石鹸の非常に良い香りを引き連れて。 「何をやっている、騒がしい。」 [CHAPTER 3 訪問のお時間は] すっきりと通った鼻梁に優美な顔立ち…それを見てやっと求めていたものにめぐり会えたと弥勒は内心狂喜した。 これ!!これですよ、家庭訪問の醍醐味は!! 例え変な家政婦や妖怪がいようとも、こういう華の様なお方がいれば全ては帳消し、素晴らしい訪問になりそうです。 というか確かあれでしたよね、りんの保護者の方は養い親なのでしたね…つまりうまくいけば私が養父の地位をゲットする可能性さえもあるかも知れないっ。 舞い上がった弥勒の心は、しかし美しい人の次の一言で無残にも片想いの苦しみに変わることになる。 「何だ、貴様は。」 先程弥勒の胸倉を掴んだ少年と何処か共通点のある黄金色の瞳は、絶対零度の光を湛えて弥勒の方を見下ろしていた。 「え、いや、私は御宅のりんちゃんの学校の教師の弥勒と申しまして…家庭訪問に伺うと予め御連絡を差し上げたかと…。」 誰ですか、美しい人の怒った顔はなお美しいとかほざいた輩は。 美しい事はもうこの上無いほどに美しいですが、命の危険を感じるほどに怖いじゃないですか…。 と、弥勒の言葉を受けてその美しい人の眉が微かに上がった。 「確かにその連絡は受け取った。 それ故私は今日は仕事をオフにし、朝の五時から客を待っていたのだ。」 おお、覚えていて頂けましたか…ってそれでは何故そんなに不機嫌でいらっしゃるのです…? …ん、待てよ、今この美人は朝の五時からと言わなかったか…? 誰が朝の五時から人様の家を訪ねますか、と本来なら弥勒はこうこの相手に問い掛けたかった。 しかし。 弥勒にとっては美しい人は法律なのである。 逆らえない…何より、今回の相手の場合は逆らったら命が無いかもしれない。 この相手の事を良く知っている訳では無かったが、弥勒の第六感が切実にそれを告げていた。 「そ…それは…遅くなりまして…」 何とも言えない表情で頭を下げた弥勒を、美しい人は黙って指先を後方へ向ける事で応接室へ戻れと促した。 [CHAPTER 4 奥様のお茶] ―――――何てことだ。 明るい居間で改めて殺生丸の顔を眺めて、弥勒は思わず溜め息をついた。 …ぜ、是非、私の子を産んで頂きたい… 思わず怪しげな妄想に耽りそうになる所を、先刻の小憎らしい少年に小突かれる。 「何ぼけっと突っ立ってんだよ。 …しかも…あんま考えたくねえけど何とも言えずいやらしい目つきで殺生丸を見るんじゃねえっ」 いやらしい? この私の何処がいやらしいというんですかっ。 こう見えても私は僧籍に入ってますし、いくら不良法師とは言え御祓いも出来るんですよ。 しかもこの布を巻いた右手には誰にも言えない秘密兵器が眠っているんです。 お前のような生意気なガキにいやらしいなんて言われたくはないですね。 弥勒がぶつぶつ口の中で文句を言っている内に、いつの間にか向かいの立派なソファに座った殺生丸の膝の上に教え子のりんが座っていた。 「こんにちは、弥勒先生〜。」 「ああ、こんにちは。」 この非・日常的な屋敷の中ではオアシスの様な日常的な会話が束の間師弟の間で交わされて。 「あっ、てめ、また殺生丸の膝の上なんかに乗りやがって!!」 何とも悔しそうにりんを睨む犬夜叉を、殺生丸の一言が黙らせる。 「大人気ないぞ、犬夜叉。それともうらやましいのか…?」 赤面してぐぐぐ、と黙る犬夜叉を他所に、間違いなくうらやましいんでしょうなあと弥勒は冷静に分析した。 いや、はっきり言って彼自身も羨ましくて仕方なかったのだから。 「…それで、教師。 わざわざ私の家にまでやって来てりんについて話したいとは一体何の話だ。」 何とも尊大な口調で美しい人が言い放った言葉は、この訪問の真の姿に近付いた様でいて、実はそうではなかった。 …本来家庭訪問とは保護者と教師とが一対一で向かい合い、子供の事について話す行事(?)だった筈…それなのにこの状況はどうだろう。 既に休みに入っていて学校が休みであるりんは仕方が無いとしても、何故この訳の分からない少年が同席しているのか。 しかも、ああ…新学期に入ってからもう四月近くも経つというのに、私の名前は未だ覚えられてはおらず、『教師』と役職呼ばわり…此処は何としても今日中に私の名前をこの美しい人にご記憶頂かなければ!! …まあ、この家にやって来てから私の身の上に降り掛かったことに比べたら同席者がいる事も名前を覚えて貰えない事も些細な事だと自分を納得させた弥勒は、ふと家庭訪問の目的そのAを思い出した。 その@は良いのだ、紆余曲折の末に漸く達成されたのだから…『美人の奥さんに出会うこと』というのは。 そのAが問題だ、『その美人の奥さんに美味しいお茶を淹れて貰うこと』という奴はとんでも無く難しい課題に思えるのは気のせいだろうか。 何しろやっと見つけた美人の奥さんはとんでもなく気位が高そうだ。 お茶を淹れて下さいなんぞと言ったら即座に館から摘み出されかねない。 頭を悩ませた末、弥勒はついに遠まわしにお茶を所望してみる事にした。 「あの…少し咽喉が渇いたのですが…。」 こう言えばさしもの奥様も気の毒に思ってお茶とお菓子を出すという半ばパターン化したもてなしを思い出してくれるだろう。 弥勒は我ながらこれは名案だと思った…がしかし、彼の考えは甘かった。 「そうか。…邪見。」 少し声のトーンを上げて誰かを呼びつけた奥様のお声に反応して小さな扉から姿を現したのは先程の爬虫類。 「へえ、殺生丸様。何か御用でしたでしょうか。」 …ま、まあ…手ずからお茶を淹れて貰えなくても、この微妙な使用人の淹れた茶でもこの際我慢しますか。 何しろ奥様のご命令で私の為に淹れられた茶ですしね… しかし弥勒の考えはまたまた甘かったのだった。 「用があるから呼んでいる。 この教師が咽喉が渇いたそうだ、井戸に案内してやれ。」 い、井戸…!? 顔を真っ青にしかけたのはこのメンバー(殺生丸・犬夜叉・邪見・そして殺生丸の膝の上に座るりん)の中では弥勒一人のようだった。 つまりこの家では咽喉が渇いた時にはお茶では無く水という事なのだろうか。 しかも使用人(妖怪?)がいるのなら、彼が汲んでくるというわけでは無く、井戸へ行って自分で汲めと。 「へ、へえ…」 爬虫類は先刻玄関で弥勒が彼を脅した事を思い出したのか、少し嫌そうな目を弥勒に向けた。 「弥勒先生、うちの井戸のお水は美味しいんだよ。」 無邪気な幼子の声に我に返るも、弥勒としてはやはり真っ青である。 もしかしたら井戸の水を汲もうとした瞬間に何者かに井戸の中に引き摺り込まれるかもしれないし、かといって今更『やっぱりいいです』なんぞと言ったら奥様はご機嫌を更に斜めにしてしまわれるかも知れない。 …何しろ午前五時からこの奥様は客を待ち続けていたのだというのだから。 『ちょっと玄関の扉が開くのが遅かったくらいで待ちくたびれた私が悪かったです』…弥勒教師は心底そう思った。 仕方が無いので運を天にまかせて 奇跡的に…というか有難い事に、りんの言う通り井戸の水は美味だった。 元居た応接室に戻って暫くした時に再び災難に見舞われるとは露知らず、弥勒は一時その美味しい [CHAPTER 5 間男発覚!?] 取り敢えず『化け犬一族の美味しい それは…『折角お知り合いになれた美人な奥様ともっともっともっ…とお近づきになりINTIMATEな関係になること』だった。 口説き文句は…『私の子供を生んでくだされ』…これしかないでしょう、と自信満々に肯く弥勒。 家政婦・邪見はあの殺生丸様を目の前にして一体どこからそんな自信が湧いてくるのか、是非とも知りたいものだと心底思ったとか。 殺生丸様は一応男なので恐らく天地がひっくり返っても子供は産めないでしょう、とある意味常識的で優しい突っ込みを入れてくれる人間は此処には誰一人居なかった。 そんな訳で弥勒は妙に膨張した気分のまま、応接室に戻ったのだった。 ところが。 弥勒が室内に入った途端、待ち受けていたのは急に立ち上がる殺生丸の姿。 「どうしたの〜、殺生丸様。」 幼子の無邪気な声に殺生丸は軽く振り返りざまその白く華奢な腕に装着されていた腕時計を見つめる。 「あと一刻程で父上が戻られる。 あの教師、どうやら大した用事ではなさそうだ、私は父上のお出迎えの仕度をせねば…りん、お前もきちんと髪を梳かしておいで。」 「は〜い。じゃあ弥勒先生には闘牙小父様がお帰りになる前に帰って貰わないといけないね。」 何ともほのぼのした保護者と被保護者の会話である。 …が、”大した用事ではない”はっきりこう断言された弥勒の立場は無かった。 しかも学校の話など一言も出来ない内に生徒に”帰って貰わないと”と追い出されるなど、教師の風上にも置けない。 いや、元々教師にしては邪念が多過ぎる状態で家庭訪問になどやって来た弥勒も弥勒であるのだが…。 井戸端で考えた『美人妻とランデブー大作戦』は粉々である。 まあでも。 どこまでも 『父上殿という事は…私は出会ったその日にお舅さんに会えるんですね』 弥勒の胸は何故か期待に高鳴っていた。 …と。 どーん……。 庭先に巨大な影が射し、続けて轟音が響き渡ったかと思ったら凍りつくような威圧感と共にあたりが煙に覆われた。 思わず美人の奥様の腕を取りながら煙が晴れるのを待ってみると、御庭に鎮座しましていたのは一匹の見た事も無いほどに巨大な化け犬。 ![]() Illustrated by Tsuyuki in "Kuwatorokasanegura" Thanks so much...!! …そうか、こういう事が起こるからこの屋敷は建物も庭も想像を絶する程に広いのだろうか。 何とも言えず外れた感想が弥勒の頭の中を去来する。 ぐるるるるるる……。 巨大な化け犬は何故か思わず殺生丸の袖を掴んでいた弥勒をぎろりと睨み据えると、又白い煙を上げて変身を遂げた。 「って嘘でしょう…。」 絶望的な顔をして弥勒が呟くのも無理は無い。 化け犬来襲…でも奥様に私の 「お帰りなさいませ、父上…。」 いつの間にか弥勒の手を振り払って、何とも優雅に父親に向かって膝を折る殺生丸。 もしかしなくてもこのとんでもなく若作りな美中年がお舅さんな訳ですか、と弥勒は心の中で神を呪った。 「ああ、殺生丸、今帰った。」 その殺生丸を何とも愛しげに抱き寄せて髪に軽い口付けを落とす闘牙の目が、次の瞬間に剣呑な光を帯びる。 「それで…この男は誰だ、説明してみるがいい。 父は今日一日中仕事場にお前が居なくて淋しかったというに、まさか何処の馬の骨とも分からぬ相手と密通していたとは申すまいな。」 内容からして殺生丸に尋ねているのだろうが、目は何とも冷たく弥勒を見据えている。 「闘牙小父様、殺生丸様は密通なんかしてないよ。 まあ弥勒先生は間違いなく殺生丸様に一目惚れしたと思うけど…。 この人はね、りんの学校の先生で丁度家庭訪問に来た所だったの。 でもね、殺生丸様は小父様が帰って来るからって弥勒先生よりも小父様のお迎えを優先したんだよ。」 何故小学生が『密通』なんぞというシークレットワードforアンダーを知っているのかどうかはもうこの際謎の一つにもカウントされないだろう。 りんの言葉を受けた闘牙は弥勒を胡散臭そうにもう一度眺めやったものの、『そうかそうか』と目を細めてりんの頭を撫で、殺生丸の身体を抱く腕を強くした。 「冥加が屋敷に変な男がいると報告して来たのでな、居ても立っても居れずに仕事を切り上げて帰って来たのだ。」 聞きなれぬ名前…ミョウガ…野菜…?と頭に疑問詞を浮べた弥勒の横で、犬夜叉が不意にぺしゃりと何かを叩く。 「よう、冥加じじい、親父呼んできて悪い虫を追い出すなんてたまにはいい事すんじゃねえか。 俺の血を吸うのは余計だけどな。」 悪い虫…ある意味当たっているが、何とも酷い言い分ではある。 「いやしかしですな、冥加は大仕事をこなしてお腹がすいていたわけでして…」 ああこれは幻覚じゃないんだよな、ノミが何故か人語(いや化け犬語?)を解し、尚且つ泥棒の様な風呂敷包みを背負ってぴょんぴょん飛び跳ねている…。 「だからってな、俺のを吸わなくたっていいだろ。 殺生丸のとか…いやそれは吸ったら親父と殺生丸の両方に殺されるか…親父のを吸えばいいだろうがっ。」 「駄目ですじゃ、犬夜叉様。冥加はとても御屋形様と殺生丸様の間の熱い空気には入って行けませんですじゃ。」 続いている言い争いを聞きながら、此処に居る中で最もまともな感覚を擁しているのはこのノミ妖怪かもしれないと思う弥勒だった。 やっと室内が平穏な空気に戻り始めたかに思えた頃、思い出した様に闘牙が弥勒を振り返る。 「そこの者、もう夜になる…夜は私と殺生丸の時間ゆえ、死にたくなければ早々に立ち去るがいい。 明日は家庭訪問があると申して、これは昨晩私にお預けをくわしたのでな…今宵は是非とも私の腕の中で乱れて貰わねばならん。」 父親の台詞に咄嗟に顔を赤らめてその胸に顔をうずめる殺生丸。 何とも初々しくて艶めかしいと吐息を漏らしたのは弥勒だけではない。 弥勒がはっと我に返ってみれば、やっぱり有無を言わさず追い出される事になっている。いやその前に、貴方方は多分親子の筈なのに睦み合っているんですか、なんぞという確信にも似た疑問はもう思考にのぼらせることすら無意味な問いであった。 [CHAPTER 6 首に縄あり後ろ髪に美人あり] そうして、殺生丸という名の美しい奥様(←もはや打ち消し線を引いて否定すらしない)にこれでもかという程に未練を残しながらも、ようやっと帰途につこうとした弥勒に本日最後の試練が襲いかかろうとしていた。 ―――――ピーンポーン…ピーンポーン…ピンポンピンポンピンポンピンポン… これでもかという勢いで慣らされた玄関のチャイムの音は、流石の闘牙・殺生丸親子をも一時的に現実へ引き戻した。 「…っ今日はどうにもインターホンの五月蝿い日ですなあ。」 邪見がわざとらしく弥勒の方をちらりと見て、玄関へと出て行く。 …確かにたった今鳴らされたチャイムの鳴り方は、昼間に弥勒が此処へ来た時に鳴らされたそれとそっくりであった…。 ごおおおおおおおおおおおお… 「み〜ろ〜く〜せ〜ん〜せ〜い〜(怒)」 先程の殺生丸奥様の父君の変化とその何とも迫力のある一睨を見てしまったからにはもう何があっても驚きませんよ、と自らに言い聞かせる弥勒教師はしかし次の一瞬にはその認識を改める事になった。 「さ、珊瑚、お前、なんで此処に…。」 彼女は弥勒の同僚の教員で、数ヶ月前に夫婦になる約束をしたばかりだったのだ…尤も、そんな事で弥勒のナンパ癖が止む筈は無いのだが。 「何でじゃないでしょうっ!! 今度は一体何処の奥様にナンパしてたのさっ!? 弥勒先生が回る予定だった残りの家庭から待てど暮らせど来ないって学校に苦情が殺到してるんだけど!!」 完全に切れつつもそう怒鳴りつけた珊瑚は、しかし次の一瞬に寄り添って立つ二人の銀色の影に気付く。 「なっ…あの、ごめんなさい、貴方達は?」 あまりの美男美中年カップルに思わず顔を赤らめる珊瑚に、何処か闘牙は満足顔だ。 「どうしたのかな、娘御。 私はこの屋敷の主人の闘牙、そしてこれは私の長子の殺生丸だが…これは私のものなので貴方のお連れがナンパしたかどうかは置いておいて(←此処で弥勒を一睨み)、これが貴方のライバルになる事は有り得ないよ。」 珊瑚はと言えば安心していいのか照れていいのか微妙な気分で弥勒の首へ素早く縄を掛けた。 「…そ、それではお騒がせしました、このうちの馬鹿教員は連れて帰りますので…さあ、行くよっ、弥勒先生っ!!」 ぐいぐいぎりぎりと引っ張られる縄に耐え切れず、弥勒教師は今生の想い出にと美しい奥様のお顔を最後に瞼の裏に焼き付けてお屋敷を去ったのであった。 「もし未だ私に命が残されていましたら、きっともう一度貴方様に逢いに伺います…その時は是非とも私の子を…」 寝言の様にそんな言葉をうつろな瞳で呟きながら。 「弥勒先生…寝言は寝てから言いなよ?」 何とも恐ろしいオーラを放った珊瑚は、『雲母っ』と彼女専属のタクシードライバーを呼び寄せると首に掛けた縄で弥勒をぐるぐる巻きにしてその場を車内へと放り込んだのであった。 [CHAPTER 7 奥様の夜[R(笑)]] 御屋形様、此処から先の事をこの冥加に語れと仰るのですか? それは無理というものでございます、冥加はもう今日は十分過ぎる程に御屋形様の為に愛しの殺生丸様の近況レポートをさせて頂いたではありませんか。 さりげなく異母弟の犬夜叉様の魔の手からもお守り申し上げ続けていたのでございますよ。 そっ、それなのに御屋形様と殺生丸様との…今宵ののっ…濃厚な夜の生活などをレポートせよというのは余りにも酷でございます。 え…?何でも良いから記録に記しておけと…? はい、そういう事ならこの冥加、腕を振るって短く纏めて御覧に入れましょうぞ。 『御屋形様はいつも御長子と濃密な閨の時間をお過ごしになりますが、今宵はあの教師のせいもあってか一味違う夜になりそうでございます。 ほら、昨晩一晩御父君にお預けを喰わせたというだけあって、殺生丸様のお声の何と艶めかしい事でございましょう…』 こ、これ以上冥加は書けません、余計な事を書きましたら『覗いていたのか…』と殺生丸様に半殺しにされるかも知れませんし、悪くすれば全殺しかも…。 御屋形様も妙な所で子供じみた所がおありですから下手をしたらやはりこの冥加にお怒りを向けられるやもしれません。 くわばらくわばら… そうじゃ、これを書き加えておけばわしの身も安泰じゃろう。 『このレポートは一部フィクションを含んでおります。』 …っと。 よし、御褒美に犬夜叉様の血でも頂いてから眠るとしよう…。 ―――――この”フィクション”というのはある意味名案であるかに見えた。 しかしながら、『下劣な想像をしおって』とご機嫌を損ねた若君がやはり恐ろしい気迫でもって後日冥加をねめつけ、その美味しそうな血を吸わせて頂ける機会はもう二度と訪れそうにも無かったとか…。 [END](お付き合い有難うございました(笑)) |
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